第7回 雨のカーテン
2006.04.01
琉球新報2006年4月1日朝刊掲載
まだオートバイの免許をとったばかりの話です。初心者ライダーの私たちは、山原の林道で道に迷った。林道と書いたけれど初心者で女性ばかりなので、たいそうな林道ではなく、“アスファルトでない山道”くらいに軽く受け取ってほしい。
カンカン照りの真っ青な夏空に白い入道雲!夏です。暑いけどそれもまた、いい!日焼けなんか怖くない年令だった。行く手に一台のオートバイが止まっている。内心「良かった」という思いで近づいた。その瞬間「?」。なんと目の前に雨がザーザーと降っているのだ。オートバイが止まっている所は、カンカン照りで2M先に雨が降っているのです。まるで滝の前に立っているようでした。信じられない光景でした。Uターンすれば「晴」の区域。前に進めば「雨」に突入。雨を前にして、止まっていた見知らぬ1台のオートバイはすばやくUターンして行ってしまいました。若かったわれら女性ライダーは、目を合わせた瞬間うなずき、GO!!3台のバイクは土砂降りの雨の中を選択したのです。
アホやなぁ!と言ってくれるな!若さの馬鹿さなのでしょうねぇ。目は開けて居られない。息はくっるしい。全身びしょ濡れ!Uターンを選択しなかった後悔は先に立ちません。と、突然小降りになり、照りつける太陽の下へ出たのです。なんだったの今のは?生まれて始めての体験でした。思いがけないシャワーの贈り物に「道に迷った不安」は吹っ飛んで、大笑いの3人は再び元気に走りだしました。
南国特有のスコールが通り抜ける瞬間なのでしょう。街中では、片側車線だけ道路が濡れているカタブイの体験は有るけれど、あれほどくっきりと「雨」と「晴れ」が主張しあっている光景を見たことはありません。雨のカーテンを潜り抜けるか・否か? いつ思い出しても不思議な光景でした。
前へ前へと前進し続けた3台のオートバイはまもなく見覚えのある国道に行き着き、迷い道から岐路へたどり着いた。狭い沖縄で良かった(笑)