第9回 アイスキャンディー論
2006.05.20
琉球新報2006年5月31日朝刊掲載
8人姉妹の5番目の私と4番目のS姉がきょうだいの「真ん中組」で育った。大人になったある日姉妹が集まって雑談しているとS姉が「姉妹の真ん中はアイスキャンディーと同じだと幼い頃に思っていた」と発言した。「えっ?アイスキャンディー?」「そうあの冷たくておいしい、棒にさして凍らせたアイスキャンディーだ」と言う。
アイスは最初に頭のほうから舐める。チョンチョンと溶け出してくると慌てて下側(棒がさしてある所)を舐める。上下繰り返して舐めているうちに暑さに耐えられず溶けてきたアイスは棒から離れて真ん中は、道路に落ち損をした!だからきょうだいの真ん中はアイスキャンディーと同じだというアイスキャンディー論が生まれたそうな。
「真ん中」で育った方は多分うなずいているのではなかろうか。
確かに洋服もお下がりが多かった。父の出張先からのお土産も姉たちとだいぶ差があった。姉たちと同じのがほしいと言ったら「お姉さんと同じ中学生になったらね」と言われ、中学生になったら「小学生の妹はまだ赤ちゃんでしょ。我慢できないからアナタたちが譲って」と云われた。
上から見たら妹で、下から見たらお姉ちゃんが「真ん中組」なのだ。両親は8人の子どもを育てることで一生懸命で悪気はまったくなかったと思う。まさか、真ん中のアイスが棒から落ちることに例えるなんて!このアイスケーキ論を天国にいる両親が聞いたらびっくりするだろう。
だが心配御無用!我ら真ん中組も他の姉妹に負けず堂々と成長した。いつしか知恵が湧いて、上から見たら妹で下から見たら姉でもあるわけで、見方を変えれば、案外悪い環境でも無い。姉たちよりは厳しさも和らいで妹たちのように守られすぎてもいない。気楽さから手足を伸ばしていたようだ(笑)
確かにアイスキャンディ論は子ども目線では存在する!真ん中組よ、ひねくれること無く堂々と育ってほしい。おっと世渡りの術だけを学び取ってはちと困るよ。親の皆様お気をつけ下さい。