1. トップ
  2. 園長のお部屋
園長のお部屋

第4回 子育ては連弾

2006.03.06

琉球新報2006年3月6日朝刊掲載

ピアノ教室のコンサートで「連弾」のプログラムがあった。家族の誰かと一緒に曲を弾くのだ。3ヶ月前に「家族のどなたが一緒にでますか?どれくらい弾けますか?」のアンケートがあり①指一本②片手③どうにか両手④練習すればある程度⑤自信有り。その五つの答えに基づいて先生がその家族に適した連弾用の楽譜を渡す。3ヶ月の練習期間が与えられ、それぞれが家で練習する(もちろん生徒の練習日に一緒に教室へ行って指導を受けてもいい)私も娘と一緒にリスト作のラ・カンパネーラを弾いた。本番では緊張し、めちゃくちゃ音を外したが、それよりなによりとにかく楽しかった。舞台の上ではたくさんの家族の絆を拝見した。「緊張して途中で何度も手が止まる父親をさりげなくフォローしている中学生の娘さん」「幼い弟の速度に合わせながら弾く小学生のお姉ちゃん」「とても上手に弾くお母さんの横で誇らしげに会場の様子をチラチラ見る余裕の幼稚園生の女の子」「先輩後輩の中学生コンビ」その時感じたことは、子どもの気持ち(緊張感や達成感、満足感等など)に寄り添い演奏した体験は良かったなぁと言うこと。本番前のリハーサルのあと娘は「お母さん、弾けてるよ。大丈夫だから(落ち着いたらいいよ)」と言った。親と子の立場が逆?親と子が逆転で子どもの気持ちが解かる(自分の子ども時代を思い出す)時もあると思う。出演したお父さん母さん達は全員緊張していた。何度もピアノの鍵盤の上で指が止まり、やり直ししているお父さんがいた。でも一生懸命最後まで子どもと連弾しようと頑張っていた。その“一生懸命”を子どもたちは見ていると思う。人としての有り方(存在)を感じていると思う。汗を掻きつつ弾き終えたお父さんは「次のコンサートでは何を弾こうか?」と楽しそうに笑っていた。体験・体感から生まれたものは肥やしになる。

親と子の絆は机上の空論では繋げない。毎日が「連弾」なのだと思う。楽しいうれしいコンサートで涙が溢れた記憶が鮮明に残っている。