1. トップ
  2. 園長のお部屋
園長のお部屋

第14回 命よりたいせつなもの

2021.11.01

風のうたの本箱の片隅に星野富弘氏の「命よりたいせつなもの」というタイトルの詩画集があります。 命より大切なものとは、いったい何なのでしょうか?

「命よりたいせつなものがあると知ったときに生きていく力が与えられた」と、星野さんはいう。
その力に支えられて、苦しいことの多い一生を生きる一人の人間の生の軌跡は、この世のいのちに優る尊いものなのだ。

-渡辺和子氏推薦文より-

文面に「津波が迫る中、水門を閉めるために津波に向かって走って行った人、人の波に逆らうように津波がくるぞとしらせて回った人。その人たちは皆、自分のいのちより大切なものに向かっていった人ではないかと思います」とあります。

もちろん星野富弘氏は、いのちはかけがえのない「大切なもの」だと述べています。そして、その大切ないのちは天より「与えられたものだ」というのです。「せっかく与えていただいたのだから、より良く生きたい。そうでないと、せっかくいのちをくださった方に申し訳ないと思うのです。」と述べています。

私は星野富弘氏の画集に38年前に出会いました(皆様はまだ生まれてないか、子ども時代ですね(^0^)) 星野氏は、中学校教師の時体操事故に遭い、一命をとりとめましたが首から下の感覚すべてがなく、 頸髄を損傷してまったく動けない状態になってしまったそうです。大手術を何度も受けながら自力で呼吸が出来るようになったけれど、首から下は全く動けずただただ天井を見つめるだけの壮絶な日々を送ったそうです。口でペンをくわえ文字を書いたことをきっかけに花の画集を出版するまでに至りました。そのことを私は4行で書きましたが、私の想像をはるかに超えた葛藤や大変さがあったことでしょう。その後それまで描きためた詩画を障がい者センターの人の勧めで展覧会を開いたとき、その詩画集を見た大勢の人の感想文を読んで、『これからの人生で自分が何をしていったらいいのかが、うっすら見えてきた』と思ったそうです。

きっと星野氏は、天より与えられた命を愚痴や不平不満、あきらめで埋め尽くしたまま生きるより、 天より与えられた命をどう生きるか?の気持ちになってほしいと言いたいのだと思います。 『からだには傷をうけ、たしかに不自由ですが、心はいつまでも不自由ではないのです。不自由と不幸は、むすびつきやすい性質をもっていますが、まったく、べつのものだったのです。』と言っています。

私の師は、目の前にいるたくさんの子どもたちです。泣いたり笑ったりたくさんの気づきを与えてくれます。忘れていた大切な何かを思い出します。乾杯(完敗)と生きるエネルギーをもらえ感動の日々です。子どもたちの「今」をしっかりと受け止め、その「生きようとする想い」を邪魔せずに先回りせずに支えていきたいと思います。 名前の「風のうた」は、新米幼稚園教諭の私が子どもたちから受け取った感覚を思い起こし付けました。 子どもは無限のクレヨン(神秘さ、感性)を持っています。万人に平等に与えられているお日様や風や虹や雨音など自然の贈り物を瞬時にとらえる天才です。誰でも風の奏でるうたを聴いています。 聴くこともなく聴いています。

星野富弘さんの言う「命より大切なもの」・・・ 私たち大人が子ども時代に当たり前に持っていた「今を一生懸命生きる」という感覚を心の奥底から引っ張り出し命を輝かせ続けたいとおもいます。

知念みね子